東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)108号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本願発明において使用するAおよびBに属する化合物がゴムの老化防止剤特に耐オゾン剤として既に公知であつたことは当事者間に争いがないから、当事者間に争いがない前示本願発明の要旨と成立に争いのない甲第二号証の一を併せ考えれば、本願発明に進歩性があるとすれば、それは、同種の老化防止剤を特定の割合で混合するという技術思想の創作の困難性ではなくて、多数の既知の耐オゾン剤のなかから、混合すれば顕著な作用効果すなわち予測の域を越える耐オゾン効果を奏する二種の耐オゾン剤をその混合割合とともに選び出すことの困難性にある、と認めるのが相当である。したがつて、本願発明の場合は、顕著な作用効果があることが進歩性があることの前提をなし、顕著な作用効果がなければ進歩性もないといわねばならない。
そこで、本願発明に顕著な作用効果があるかどうかについて検討するに、前示本願発明の要旨によれば、本願発明はAおよびBに属する化合物をそれぞれ約五ないし九五重量%および約九五ないし五重量%の割合で混合することを構成要件とすることが明らかであるから、右の構成要件に該当する範囲内において全部顕著な作用効果を生ずることが少なくとも推認されない限り、本願発明が顕著な作用効果を有するとはいえない。そして、本願明細書には本願発明の作用効果を示す実施例として別表「添加剤」欄記載の化合物を同表「混合割合」欄記載の割合で混合した場合の実験結果だけが記載されていることが認められる。右認定の実験結果は、Aに属する化合物、a1、a2、およびBに属する化合物b1、b2、b3のそれぞれの組合せにつき混合使用した場合の耐オゾン効果を実験したものであるが、右甲号証によれば、Aに属する化合物にはa1、a2のほかに、N、N'―ジーセツクーノニル―P―フエニレン・シアミンおよびN、N'―ジーセツクーテトラテシル―P―フエニレン・シアミンほか多数があり、Bに属する化合物には前記b1、b2、b3のほかに、N―フエニル―N'―セツクーヘプチル―P―フエニレン・シアミンおよびN―ナフチル―N'―セツクーヘプチル―P―フエニレン・シアミンほか多数があることが認められるところ、右認定のとおり、本願明細書にはこれらのAおよびBに属する各化合物を混合使用した場合の実験結果は記載されていない。また、前認定の実験結果は、Aに属する、a1、a2およびBに属するb1、b2、b3の混合割合がそれぞれ八〇対二〇、七五対二五、66.6対33.3、五〇対五〇の割合で混合した場合の実験結果のみであつて、その余の割合、特にBに属するb1、b2、b3を五〇%を越える割合で混合した場合の実験結果が本願明細書に記載されていないことは前認定のとおりである。そうだとすると、他に本願発明の作用効果を示す証拠はないから、前認定の実験結果が仮に全部顕著な作用効果を示すものであるとしても、本願発明がその構成要件に該当する範囲内において全部顕著な作用効果を生ずることを推認するに足りる証拠はないといわねばならなない。
したがつて、本願発明に進歩性がないとした審決には原告主張の違法はない。
よつて、原告の請求を棄却する。
(服部高顕 滝川叡一 奈良次郎)